ばね材料は「鋼(はがね)」の一種です。鋼は、主要成分である鉄と炭素やその他の化学成分の合金です。鉄は主に鉄鉱石から製造されます。ばね材料の主要成分である鉄と鉄の主要原料である鉄鉱石について説明します。
ばね材料の種類ごとの化学成分については、下記のページの一覧表をご参照ください。
ばねは、硬鋼線やピアノ線、ステンレス鋼線、オイルテンパー線などで製造されます。これらの材料は「鋼(はがね)」です。鋼は主成分の鉄と炭素などの化学元素との合金です。さまざまな化学元素を添加することにより、いろいろな性質をもった鋼が作られます。
鉄の製造方法は大きく分けると、鉄鉱石から高炉を使って製造する方法と、鉄のリサイクルから電炉を使って製造する方法があります。資源の少ない日本ではリサイクルの体制が整えられ鉄が循環する仕組みが構築されてきています。現在は全体の30%がリサイクルの鉄になっています。
しかし、ばねの材料は普通の鋼よりも不純物の管理や機械的性質の規格が厳格であるため、鉄鉱石から製造されることがほとんどです。そのため、ばねの材料は鉄鉱石や製鉄に使用する石炭の国際価格に影響される傾向が強いです。
鉄鉱石とは酸化鉄の塊です。わかりやすくいうと「サビの塊」みたいなものです。製鉄の作業とは、酸化鉄から酸素を取り除いて鉄を取り出すことです。一種の還元化の作業といえます。
鉄鋼の製造は大きく3つの工程にわけることができます。
①鉄鉱石をコークスで燃焼して還元し銑鉄を製造する工程
②銑鉄から多すぎる炭素を取り除いて鋼を製造する工程
③圧延の工程
コークスは石炭を原料として製造される燃料です。石炭を蒸し焼き(乾留という)して作られます。どうして石炭をそのまま使用しないのかというと、石炭には硫黄やコールタールやピッチなどの不純物が多く含まれているからです。硫黄は鉄の品質を著しく劣化させてしまいます。
また、コールタールやピッチは高熱燃焼の妨げになり、エネルギー効率を下げてしまいます。大昔は石炭がそのまま使用されていました。さらにもっと大昔は木炭が使用されていました。
銑鉄は鉄鉱石を還元して得られます。非常に炭素を多く含みます。炭素が多い方が融点が低くなるので、作業性がよい利点があります。しかし、銑鉄は硬いが非常に脆い性質をもっていますので、用途には限りがあります。銑鉄は鋳物の材料や鋼の材料となります。
鋼は銑鉄から多すぎる炭素を取り除き、適度な炭素量(2~4%)にして、必要な強度と靱性を得ます。その後、目的に応じて化学元素を添加し、さまざまな機械的性質をもった鋼を製造します。
最後に圧延し、適切な大きさや寸法にして出荷されます。この材料を線材の二次メーカーは伸線や圧延して、さまざまな寸法のばね用鋼線や鋼帯を製造します。
鉄は地球の地殻(表面付近)の約5%を占めている物質です。そのうち人間が技術的に採掘できる鉄鉱石の量は約1兆トンあるといわれています。全世界では毎年約20億トンの鉄鉱石が生産されています。単純に割ると500年分です。
海底にはもっと多くの鉄鉱石が埋蔵されていますから(現在の技術では効率的に採掘できませんが)、とにかく非常に多くの鉄鉱石が地球上には存在しているといえます。このように人類が利用できる鉄鉱石は地球上にある全てのほんのごくわずかでしかありません。
非常にたくさんあるということは、非常に安いということにもなります。現在では、大規模鉱山で大規模資本が大規模な機械化によって独占的に採掘作業を行っています。鉄鉱石の鉱床は太古の海底が隆起して鉱山になったものですが、大きさは厚さが数百mで長さが数百kmにも及ぶ非常に巨大なものです。機械化による大量採掘でも何十年も採掘できます。
また、鉄鉱石を採掘する事業は、それを海外に運ぶための港湾の建設や鉱山事業に携わる多数の労働者の町の建設も含まれ、莫大な資本がかかります。いつもなにげに使っている鉄は、このような日本では考えられないような大規模プロジェクトに支えられているのです。
鉄の主原料は鉄鉱石です。鉄鉱石は太古の昔(先カンブリア時代)にシアノバクテリアが数億年という途方もない年月をかけて作り上げたものです。
機械化された大規模鉱床の鉄鉱石のほとんどは、今から27億年前から19億年前にシアノバクテリアが作りました。石炭は太古の樹木が化石化した燃料ですが、今から2億8千万年前(石炭紀)から2千万年前(新生代)のものです。それに比べると、鉄鉱石は遥かに大きなスケールの年月をかけて生成されました。
シアノバクテリアは現在も健在で、絶滅していません。夏の暑い時など、栄養の豊富な池や沼にアオコが発生して表面が緑一色になりますが、これはシアノバクテリアの大量発生が原因の1つです。また、懐石料理に高級食材として使われる水前寺ノリは、シアノバクテリアの一種です。
シアノバクテリアは地球上で初めて光合成をした微生物です。光合成とは、光エネルギーと水と二酸化炭素から生物に必要な物質を生成し、廃棄物として酸素を放出することをいいます。シアノバクテリアの光合成によって放出された酸素が当時の地球の環境を激変させ、鉄鉱石の生成の直接の原因になりました。
では、どのようなメカニズムで鉄鉱石は作られたのでしょうか。27億年前の地球の環境は現在とどのように違っていたのでしょうか。
今から27億年前、地球に磁場が誕生しました。それまでは南北の磁極は存在しませんでした。なぜ磁場が生まれたのかについてはいろいろな説があります。一説には、地球が冷え固まってきて、鉄とニッケルでできた地球中心部の核が対流をはじめ、それが大きな磁場をつくる原因になったのではないかといわれています。
磁場のなかった頃の地球には放射線のような有害な宇宙線が大量に地上に降り注いでいました。当時の地球上の微生物にとっては、光にあたることは死を意味しました。地球に強力な磁気シールドができたおかげで、有害な宇宙線がカットされ、暗い海底から光のあたる場所に微生物は進出できるようになりました。
そして、光を積極的に体内に取り入れてエネルギーに変換する微生物が出現しました。それが光合成する微生物であるシアノバクテリアです。
今から27億年前の大気と海は今とは全く違っていました。大気には酸素はほとんど存在していませんでした。当時の微生物にとって酸素は、体内を酸化する有害物質です。
現在でいうと、塩酸とか硫酸をかけられたようなものです。また、海の成分も現在とは全く異なっており、大量の鉄イオンが溶け込んでいました。この鉄イオンは、核に沈んでいかずに地表に残留した鉄や、海底火山活動で地中深くから噴出した鉄、あるいは隕石に含まれていた鉄などが大量に溶け込んだものです。
シアノバクテリアは地球規模で大繁殖し、地球の環境を一変させました。吐き出した酸素によって、海に溶け込んでいた鉄イオンは酸化し、酸化鉄(赤サビ)となって海底に大量に降り積もりました。何億年にも渡って降り積もりました。
当時の海は青い海ではなく、赤い海だったといわれています。海中の鉄イオンと全て反応し終わると、今度は大気中に酸素を吐き出しました。こうして、現在の大気中の酸素が生まれました。突然増えた酸素に対応できない微生物は絶滅するか海底の無酸素の一部の場所で生き延びるしかありませんでした。当時、大量絶滅があったと考えられています。
しかし、その中から有害であった酸素を逆に体内に積極的に取り入れてエネルギーとする生物が進化してきました。その生物は真核生物といわれ、私たちの遠いご先祖にあたります。
鉄は地球上で最もありふれた金属ですが、その原料となる鉄鉱石は微生物が数億年かけて作ったのかと思うと、たくさんあっても貴重な資源であると思わされます。また、それをたかだか誕生して25万年しかたたないホモサピエンスが、当時は単なる大量の廃棄物だったものを、現代社会を支える最も重要な物質である鉄鋼として利用しているというのは不思議なことです。
「いいね!」ボタンを押すと最新情報がすぐに確認できるようになります。
>YouTubeチャンネル【ばねの総合メーカー「フセハツ工業」】動画配信中です!
>新YouTubeチャンネル【フセハツ工業のばね作りチャンネル】新着製造動画、更新中です!
■ばねの化学成分に関連する項目
プロバスケットボールチーム「大阪エヴェッサ」の公式スポンサーになりました!
>ブログ「ばねとくらす」【プロバスケットボールチームの公式スポンサーになりました】
![]() ![]() |
メールアドレスはこちら