ばねに用いる材料は強度が高いため腐食すると、強さに及ぼす影響は非常に大きくなります。
ばねに関わらず金属の表面は、不安定で変化しやすいといえるもので、大気中の酸素、水、炭酸ガス、腐食性気体、腐食性液体などと反応し腐食してしまいます。
基本的に金属の表面は、不安定で変化しやすいものと言えます。大気中の酸素、水、炭酸ガス、腐食性気体(塩素など)、腐食性液体などと反応し腐食します。
なお、錆発生を促進させる条件として下記のようなことが挙げられます。
・錆の発生速度は、金属の表面積に比例するため、鉄の表面が粗いほど錆の発生は早い。
・異物の付着は、空気中の水分を凝縮させやすく、錆の発生を促進します。その中でも特に塩分や紙、繊維質など、吸湿性の異物が付着した場合は、更に錆発生が促進されます。
・鉄に触れる空気の温度が変化した場合(温度が下がる時)は、結露による錆が発生しやすいことから、作業場や倉庫などにおける昼夜の温度差には、十分注意をする必要があります。
錆発生の参考例
もし液体の水が接すると
Fe + 2H2O → Fe(OH)2 + H2 ・・・①
の反応が起こり、水酸化第1鉄を生成します。更に、水及び水中の溶解酸素と反応し、赤錆の主成分となる水酸化第2鉄となります。
Fe(OH)2 + 1/2H2O + 1/4O2 → Fe(OH)3
また、式①で発生する水素は、空気中の酸素と化合して水を生成しますが、一部の水素は、鉄表面に浸透して表面ぜい化を起こすため、疲れ寿命を短縮させるといわれています。
錆を防ぐには金属表面が水と酸素に直接触れないようにしないといけません。
そのために、金属表面に保護膜を張り、水や酸素を遮断し、同時に錆の発生を促すような塩分、指紋、雰囲気ガスなどの侵略の防止し、金属の耐久性増進に努める必要があるといいます。
この様なことからばねを製作する際には、下記の図のように「防食設計」を組み込んだうえで製作をしています。
防食設計概要(簡易)
※当社では、上記のように、鍍金や塗装の処理のご指定が無ければ、製作後に防錆油の処理を行います。
耐食材料でばねを製作する方法です。「ばね用ステンレス鋼線」、「ばね用メッキ線」、「ばね用チタン合金」などがございます。
耐食性ばねの例
SUS304-WPB:ばね用ステンレス鋼線の中で1番良く使用されている材質です。また、ばね用ステンレス鋼の中でもより引っ張り強さが強いものというもの特徴です。
SUS316-WPA:SUS304-WPBよりも耐食性が良好な材質です。その他の特徴として、SUS304-WPBは磁気があるのに対し、この材質は磁気が少ないという点が挙げられます。
チタン合金:宇宙開発、航空機など軽量且つ高強度を必要とする分野に用いられています。
耐食性でもステンレス鋼をしのぐ性能を持っていますが、難加工の材質でコストが高く、めがねフレーム、ゴルフグラブなど使用用途が限定されています。
詳しくはこちら↓
>耐食性ばね
>チタンばね
耐食材料以外の材料を使用する際、防食法(塗装・鍍金・化成処理)を用いて製作する方法です。
環境遮断(防食法)の例
塗装:ばねの表面に塗膜を形成させる方法です。主に圧縮コイルばねにこの方法は使用されます。密着ばね(引きばね)などは、密着している部分に塗装が行きわたらないため、あまり用いることがありません。
塗装をする際、容易に剥がれず、適度な硬さと伸び、弾性を持っていて、少々の外力が加わっても変形したりせず、外部(水や油)などからの付着物により、色、つや、強度の劣化がないようにするという条件があります。
また、塗料の状態によって、液体塗装と粉体塗装の2種類の方法に分類されます。
塗装の種類図
鍍金(めっき):表面に金属の薄膜を被覆する方法です。
鍍金には主に①装飾性、②機能性、③防食性の3種類の目的で行われており、①装飾性を求める場合には金めっきや銅めっきを、②機能性を求めるならニッケルめっきやクロムめっきを、③耐食性を求めるなら一般的に亜鉛めっきやクロメート処理が行われます。
また、防食対策で主に行う亜鉛めっきでも、電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき、衝撃亜鉛めっきの3種類ありますが、特殊な場合を除くと基本的に電気亜鉛めっきを用いることが多いです。
鍍金(めっき)の種類図
化成処理:ばねの表面を化学薬品で処理して化学変化を起こさせ、表面に生成した被膜を防錆の手段として用いる方法です。
めっきでは主に表面しか上手く処理できませんが化学処理だと化学薬品に浸透して処理するので満遍なく防錆被膜を貼ることが出来るというメリットがあります。
主にばねに用いられる化学処理の方法としては、黒染めと呼ばれる酸化鉄化成処理とパーカライジングと呼ばれるリン酸塩化成処理の2種があります。
化成処理の種類図
詳しくはこちら↓
>ばねの表面処理
>ばねの塗装
>ばねの化成処理
■ばねの二次加工例
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