ピアノ線と硬鋼線の化学成分を比較して説明します。化学成分は、ピアノ線と硬鋼線ではどのように違うのでしょうか。
まず、ピアノ線と硬鋼線の化学成分が規格化されているJIS規格について説明します。
ピアノ線の化学成分は「JIS G 3502 ピアノ線材」に、硬鋼線の化学成分は「JIS G 3506 硬鋼線材」に規格化されています。これらの規格は、ピアノ線や硬鋼線を製造するための材料の化学成分について細かく定めたものです。
ピアノ線の材料は全部で18種類、硬鋼線の材料は全部で21種類が規格化されています。
これらの材料に、熱処理や酸洗い、伸線などの工程を何度も繰り返して、さまざまな線径のピアノ線や硬鋼線を製造します。
よく似た規格に「JIS G 3522 ピアノ線」と「JIS G 3521 硬鋼線」がありますが、こちらはピアノ線や硬鋼線の種類とか引張り強さや線径の許容差などが規格化されています。化学成分については記載されていません。
代表的なピアノ線材と硬鋼線材の化学成分は次のようになります。(単位mass%)
化学成分 | SWRS82A(ピアノ線) | SWRH82A(硬鋼線) |
C (カーボン・炭素) | 0.80~0.85 | 0.79~0.86 |
Si (シリコン・ケイ素) |
0.12~0.32 |
0.15~0.35 |
Mn (マンガン) | 0.30~0.60 |
0.30~0.60 |
P (リン) | 0.025以下 | 0.030以下 |
S (硫黄) |
0.025以下 | 0.030以下 |
Cu (銅) | 0.20以下 | ― |
mass%というのは、質量パーセント濃度のことです。例えば、Cが0.8とは、100g中にCが0.8gあるということです。
「SWRS82A」というのは18種類あるピアノ線材の規格の一つで、加工してピアノ線B種(SWP-B)になります。
また、「SWRH82A」というのは21種類ある硬鋼線材の一つで、加工して硬鋼線C種(SWC)になります。SWCは80C(80カーボン)とも呼ばれている硬鋼線です。
SWP-Bはピアノ線の代表的な鋼種で、SWCは硬鋼線の代表的な鋼種です。どちらも、その鋼種で流通量が最も多く一般的な材料といえます。
厳密にいうと、鋼線を製造するための一次材料の化学成分の比較ですが、二次加工品であるピアノ線と硬鋼線の化学成分の比較とみなして大丈夫です。材料成績表にも必ず記載があります。
この表をみて言えることは、当然のことですが、ピアノ線ほうが硬鋼線に比べて化学成分の管理が厳しいということです。しかし、逆に言うと硬鋼線の中にはピアノ線と同等の化学成分を満たすものが中にはあるということです。
たまたま、ピアノ線と同じ化学成分を満たした硬鋼線が、ピアノ線と同等の品質かというと、そうではありません。ピアノ線には硬鋼線にない厳しい規格が他にもあります。例えば、表面傷の深さや脱炭層の深さについての規格などがそうです。これらの規格は、硬鋼線には定められていません。
![]() |
||
硬鋼線の材料検査成績表 |
「いいね!」ボタンを押すと最新情報がすぐに確認できるようになります。
>YouTubeチャンネル【ばねの総合メーカー「フセハツ工業」】動画配信中です!
>新YouTubeチャンネル【フセハツ工業のばね作りチャンネル】新着製造動画、更新中です!
プロバスケットボールチーム「大阪エヴェッサ」の公式スポンサーになりました!
>ブログ「ばねとくらす」【プロバスケットボールチームの公式スポンサーになりました】
![]() ![]() |
メールアドレスはこちら