2018年度関連企業懇談会 西日本プラスチック製品工業協会
吉村篤MOULDERS
vol.56 2018.11
2018年度関連業界懇談会
『なるほど!人材雇用と磨きを実践するリーディング企業』
2018年9月7日(金)、シティプラザ大阪において2018年度関連業界懇談会を、56名の参加により開催いたしました。
今回は、中小企業の人手不足問題が顕在化している今、解決のヒントが得られる機会として『なるほど!人材雇用と磨きを実践するリーディング企業』をテーマとし、3企業による事例紹介とパネルディスカッションを実施しました。
パネルディスカッション
<パネラー>順不同
株式会社ライト工業所 代表取締役 江守敦氏
フセハツ工業株式会社 代表取締役社長 吉村篤氏
株式会社横井製作所 取締役専務 横井慎一氏
<コーディネーター>
大阪府商工労働部大阪産業リサーチセンター 主任研究員・中小企業診断士
松下隆氏
①利益について
松下氏:
大阪の経済情勢について、「月報 大阪工業指数」より、平成30年4月速報情報として、プラスチック製品工業と輸送機械工業の毎月の生産・出荷・在庫の推移を比較。
プラスチック製品工業は下げ基調であるのに対し、汎用・生産用・業務用機械工業や輸送機械工業は上げ基調。
また、西日本プラスチック製品工業協会の景況感調査結果から、経営上の問題点としては「原材料高」が最も選択社が多い。
現在の景気と1~2年後の景気の見通しはどのように考えているか?
江守氏:
「今 良い /今後 既存は下げ、新規は上げ」。
製品には息の長いものとそうでないものがある。
日頃から流れている製品はオリンピックを境に下がる、新規製品は上がると考えている。顧客も新規分野にシフトしている様子。
吉村氏:
「今 良い /今後 良い」
自動車部門は若干プラス、その他が伸びている。日本の場合、ばねだけでなく、表面加工、熱処理等のプラスアルファを求められている。
また、東京から当社ホームページの閲覧が多く、東京方面の展示会・営業を強化し、情報を東京で収集し、ものづくりを大阪でとしている。展示会出展は反響が大きく、仕入先開拓にもつながっている。
横井氏:
「今 良い/今後 良い」
商品開発や材料開発の結果の認知度が上がり、今年の秋口から本格的に量産。引き続き1~2年後も好調を予想。紙媒体でのコピー機は日本製が世界の90%。その中での需要増。
松下氏:
利益を出すために効果があった方策は何か?
横井氏:
「自動化/材料開発」
24時間で有人成形していたものがほぼ無人で成形できるようになったことは利益への大きな貢献。いかに安くいい材料を開発することで利益に結び付く。
IoTは生産管理ソフトで収集する必要があるが、今後の導入を検討。当社でやらなければいけないと考えているのは、おぼろげに見えている現状を明確に把握すること。
江守氏:
「IoT」
各社の答えは、自社で開発したものが利益を生むという観点が共通している。
コスト削減という見方もあるが、社内にノウハウや経験が蓄積されることが進めば、よりレベルの高いところを狙える。
IoTの本質はデータを取得てきること。IoTによりコミュニケーション能力が向上したことが最大の効果。
事業の立て直しが必要となったので、他社ができない顧客からの要求への対応のためIoTが必要であったが、外注すると何億円かの費用がかかるものを、経費削減のために内製化せざるを得なかった。
自分が頑張ればなんとかやれると考えてプログラミングを勉強した。
吉村氏:
「内製化」
営業担当の行き先、得た情報がスマートフォンを経由して社内で共有化できる仕組みを自社オリジナルで開発。
IoTはできるなら、社内でやっていみた。5~10年先ならもっと楽にできないかと期待している。なんでも内製化したい。ホームページも内製化で。
②ビジネ・スモデルについて
松下氏:
私が考えるビジネス・モデルからは、本日ご参集の3社は下図のような、それぞれ異なるパターンであるように思われる。
このパターンを見た感想は。
横井氏:
基本的には川上思考で。材料開発だけでなく、設計の提案や自社独自のものづくりにこだわりたい。
顧客の開発部門が来社する回数も増えている。社内で評価したり実験したり。材料開発のレシピを材料メーカーに渡す。用途開発を営業サイドが顧客から情報を得て、材料メーカーに協力してもらって。
金型部門の技術者は生え抜きの技術者である。もともと金型部門があったが、金型製造会社を買い、指導者や金型業者がいろいろ教えて社内で覚えて技術を覚えている。
江守氏:
どこでもつくれるものしか作っていないが、それでも利益がでるような仕事をしていることもこだわり。営業しやすい。
どこで作れるものしか作っていないので、見学もOKしているが、どこでもつくれないものを作るようになった場合、クローズド環境で製造することも考えないと。
専門的な人材は募集しても見つけられないので社内で育てることを頑張っている。
吉村氏:
日本のものづくりでないと出来ない場合。中国へ依頼していた仕事を日本に戻す場合に受注可能な業者がほとんどいないことも。
部品づくりをするときに技術に長けた人を採用することで社内に技術を蓄積。
③人材を「雇う」について
松下氏:
大阪労働力の図表のとおり、「生産工程」(製造業が該当する)で2.1倍、事務よりは採用が難しいことが予測される。
企業が人材にすべきこと
・「雇う」ことが原点
・次にどう技術や技能、企業文化を「磨く」かは100社100様
・最後に、それらを「継ぐ」
まず、雇うための方策として就業志望者への情報提供が非常に重要。効果はどうか?
吉村氏:
ホームページの中で採用ページを充実。動画も。マイナビ、リクナビも利用していた。
女性従業員を見て女性の従業志望者も来るようになった。採用に使えるものは全て利用し、採用活動に業務時間の30%を費やしている。
一番大事だと思っているのは「社長の熱意」。熱意を持った人を採用したいので、自分の熱意を伝えることを重視している。
江守氏:
マイナビの利用は、広告を掲載するパターンと就業志望者を一本釣りするパターンがあり、コストが高いもののメリットが見出せる状況であった。
今年から大企業も同方法の利用が増え、就業志望者の質が下がったと感じている。現在はマイナビだけでなく、サイトの充実、ハローワークへの登録、折込チラシの利用など、広く募集している。
自分で面接したり、ホームページを作ったり等、社長自ら打合せしないといけない。業務の30%ぐらいは費やしている。
一番大事にしているのは、素直な人。つながりのなかで仕事ができる喜びを感じることができる人を採用すること。
横井氏:
採用はホームページなどで情報公開に努めて、雰囲気を伝えるよう心がけている。託児所を作ってからしばらくは女性ばかりの採用になった。
社内報で情報共有、コミュニケーションがとりやすくなった。業務に関すること、社員のプライベート等、特に書く内容にこだわらず、社内で作ることで視覚に訴え、各部署に回覧した後掲示してパート従業員も見ている。
昔はフロアに全員集まることができたが、少しずつ従業員が多くなり、作業場所が離れ、それだけでコミュニケーションが取りづらくなることが解消。
一番大事にしているのは、仕事とどういうものかをはっきり言うようにし、やりがいについても訴え、何事にも正直に伝えること。
④人材「磨く」について
松下氏:
人材を磨くには、社内でのコミュニケーションが重要である。また、磨くためには技能検定試験の活用等も効果的であると考えており、資格取得が従業員のモチベーションにもつながる。
吉村氏:
ばね技能検定。受験費用、講習会費用等、全て会社負担で受験できるようにしている。
磨く方策としては、若手に早い時期に計画的に権限を委譲し、失敗してもいいからと任せるようにしている。
江守氏:
コミュニケーション。個人の仕事の成果を全員で共有し、最終的に全員でできたとする。技能検定はあまり利用してないが、社内での作業の習熟度を測ることを実施。
磨く方策としては、吉村氏と同様に権限を持って仕事をしてもらうことと、従業員が他の従業員を前にして自分の業務をプレゼンする時間を作っている。
横井氏:
コミュニケーション。従業員同士、労使間など。進みたい方向を話しし、共有。社員旅行、親睦会等、仕事外でのコミュニケーションを大事にし、家族ぐるみで付き合いなどもできるようにしている。
技能検定はプラスチック成形について理解を深めることができる場でもある。合格後、仕事に関するコミュニケーションが非常良好になることから積極的に受験を勧めている。
磨く方策としては、OJTもやっているが、他社の協力を仰ぎ、顧客の工場見学や、金型工場の見学等、外部を利用すること。