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ばね力学用語(3) 応力とは―応力の基礎のきそ

ばねの設計をするときに、応力-ひずみ線図とか材料の引張強さの話が出てきます。降伏点、耐力、縦弾性係数に横弾性係数、ポアソン比など、何のことやらサッパリわからない用語がたくさん出てきます。

これらは、ばねを設計するときに必要なものなのですが、どのように必要なのかを順を追って説明します。

 

>ばね用語(力学編)

 

>ばね力学用語(1)ばね定数とは

 

>ばね力学用語(2)弾性係数とは

 

 

 

今回は「応力の基礎のきそ」です。

 

1.応力とは

 

応力とは、単純にいうと「力を断面積で割ったもの」です。

 

応力を計算するときの「力」とは「物体の内部に生じる内力」のことをいいます。外力ではありません。ここを間違うと、最後まで応力がわからなくなってしまいます。

 

ウィキペディアの定義は、「応力とは、物体の内部に生じる力の大きさや作用方向を表現するために用いられる物理量である」と記載されています。

 

応力を理解する上での最初の重要なポイントは「内力」を知るということです。

 

では、実際に問題を解いて応力を考えてみましょう。応力を学ぶときに一番はじめに出される問題です。

 

問題1

断面積50の丸棒があります。片方が壁に固定されています。もう片方を500の力で引張った場合、応力はいくらになるでしょうか(簡単に考えるために単位は省略します)。

 

答えは、500÷50=10 応力は10になります。これは簡単ですね。では、2問目です。

 

問題2

断面積50の丸棒があります。丸棒の両端をそれぞれ500の力で引張った場合、応力はいくらになるでしょうか。

 

両端で引張っている外力は500+500=1000。内力は1000なので、1000÷50=20 答えは、応力20。と、考えてしまいそうですが、これは正解ではありません。この問題の正答率はかなり落ちます。

 

答えは、問題1と同じです。500を50で割って、応力は10となります。

 

実は、問題1では壁にも逆方向に500の力が働いており、そのために釣り合って静止しています。見た目は違いますが、問題1と問題2は力学的には同じ状態なのです。

 

 

2.内力と外力について

 

内力とはどのような力なのでしょうか。外力とどう違うのでしょうか。意外と内力と外力の違いを説明するのは簡単ではありません。

 

例として、AさんとBさんが押し合って静止している状態を考えます。

まずAさん「だけ」に注目します。先ほどの問題例のとおり、Bさんが人でも壁でも力学的状態は同じです。Aさんは押します。すると、Aさんは押した力と同じ力を外から感じます。作用・反作用が釣り合った状態です。押した力も反発して感じた力もともに外力です。Bさんに「だけ」注目した場合にも同じことがいえます。

 

内力は一体どこにあるのでしょうか。

 

次に、AさんとBさんの「両方」に注目します。2人が押し合っている接点では、作用・反作用の力がペアで働いています。この力が「内力」です。「2つ」の注目する物体間で働いている力が内力です。

 

注目する点が違うと、同じ方向の同じ力でも外力となります。どの2つの物質間の作用・反作用に注目するのかが大切です。内力は「2つ」の物体に注目して作用・反作用を一対として考えます。これが応力を理解する次のポイントとなります。

 

では、最初の丸棒の問題では、どの2つの物質に注目すればよいのでしょうか。丸棒は1つしかありません。

 

ここで、3つ目のポイントがあります。「断面に注目する」ことです。見た目は1つの物体ですが、断面を境に2つの物体があると仮定して考えるのです。丸棒は1つですが、応力計算する基準となる断面は2つの物質の接点であると仮定しているのです。

 

応力を理解する上で、ここが一番ややこしいところです。見た目は1つの物体でも2つの物体と仮定して考えることで内力が見え、応力を計算することができます。

 

「応力とは、力を断面積で割ったものである」という定義を理解する3つのポイントを整理すると、次のようになります。

 ①力とは内力のことである。

 ②内力は2つの物質間の作用・反作用が一対として働いている。

 ③1つの物質でも、断面で2つの物質が接していると仮定して考える。

 

 

3.ニュートンの法則のおさらい

 

ここで、応力を理解する大前提として、「釣り合った状態」と「作用・反作用」について確認しておきましょう。これは、アイザック・ニュートン(1642~1727)が発見した物理の大法則です。

 

ニュートンの法則

第1法則 慣性の法則

第2法則 運動の法則

第3法則 作用・反作用の法則

 

材料力学は静力学です。学校での学習は動力学に極端に偏りがちで、静力学にとって重要な第1法則と第3法則が軽く扱われる傾向にあります。忘れている方もいるかもしれませんので、応力に関する範囲で第1法則と第3法則を説明します。

 

第1法則 慣性の法則

釣り合った状態では、物質は静止(または等速直線運動)します。釣り合った状態とは、次のような状態をいいます。

 

1.力が働いていない状態

2.作用している力の合力がゼロの状態(方向が逆の同じ力が働いている場合など)

 

物質にまったく力が働いていないということは厳密にはありませんので(地球上なら重力は必ず作用します)、実際にはさまざまな力の合力がゼロになって物質は静止しています。静止していても力は常に働いているのです。

 

この静止していても働いている力を知ることが、応力を知るということです。応力は材料力学や構造力学における強度計算に不可欠です。

 

第3法則 作用・反作用の法則

作用・反作用の法則とは、「2つの物体間に働く力は、同じ力が同一線上で逆向きに働く」というものです。力は単独では存在することができず、常にペアとして存在しているということです。

 

応力は、ある物質の断面を仮定し、1つの物質をあたかも2つの物質があるかのようにみなし、その内力(作用・反作用)の関係を考えているといえます。

 

 

4.応力研究の歴史と現在

 

応力という概念をはじめて確立したのは数学者のオーギュスタン・コーシー(1789~1857)です。物質の断面への圧力という考え方をはじめて弾性論に導入しました。応力は実験ではなく数学的に考えられたものでした(数理弾性論)。

 

応力がわかれば機械や建築の強度が全て計算できるのかというと、そうではありません。産業革命後、応力を計算して、実験室で得たデータをもとに構造物を作っても、それより低い強度で破壊される現象が、さまざま発見されます。

 

例えば、疲労破壊現象やクリープ現象、水素脆化、溶接部の強度脆化、などです。

 

これらの破壊現象や応力低下現象に対応するために、今日までさまざまな応力係数が考えられ、応力計算が緻密化されてきました。

 

しかし、今日では数学理論や構造実験の他に、もう少し広い視野にたって応力や破壊現象を研究する材料強度学などが発展してきています。材料強度学では、構造体が実際に使用される場所や生産数量、製造工程、産業文化なども含めて総合的に体系的に応力と破壊現象が研究されています。

 

 

次回は、応力の種類について。ばね計算にとって必要な、圧縮応力、引張り応力、ねじり応力、せん断応力…、とは何なのか。

 

 

(つづく)

 

 

>ばねの「せん断未修正応力」とは

 

>ばねの「最大試験力」とは

 

>ばね設計「ばね設計手順 7つのポイント」

 

 

 

 

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